10/12決算特別委員会で意見開陳をおこないました

都政を革新する会のほらぐちともこです。令和元年度杉並区各会計歳入歳出決算の認定にいずれも反対の立場から意見を述べます。

【1】阿佐ヶ谷再開発について

そもそもコロナ禍にもかかわらず、「本事業は阿佐ヶ谷駅北東地区における防災性と安全性の向上及び教育環境や医療施設の機能等の向上を図る」として、多くの住民の反対の声を無視して事業計画を粛々と進める区の姿勢は大問題です。

この再開発計画が地域のためでも教育環境の向上のためでもないことが象徴的に示されたのが、今回補正予算で明らかになった給食室の減増築と工事用通路建設です。子どもたちや住民の安全に重大な影響を及ぼすと考え、絶対反対です。10月8日の決算特別委員会で、この「工事用通路」は杉一小の建設、児童館の解体、河北病院の建設と解体で使用する道路であるとの答弁がありましたが、解体に要する工期は河北病院はおよそ1年程度で阿佐ヶ谷児童館は3~4ヶ月。延べ床面積で言うと病院が約2万平方㍍、児童館は約470平方㍍。比率は実に44:1です。ほぼほぼ病院の建て替えのための工事車両用通路であり、そのために子どもの教育環境に影響を与えることを「病院建設のために仕方がない」と子どもたちや保護者に言うのでしょうか? 杉一小の北門を使っている児童は現在80~100名とのことです。現時点で区側から示されている「安全対策」の中身は、①通路の東側西側の両側の入り口に柵などを設置する、②通路使用時にはガードマンを配置する、のみです。これで本当に安全が守られるのでしょうか? 甚だ疑問です。

工事用通路を通って入ってきた車輌は杉一馬橋公園通りに出ることになるそうですが、そうなると杉一小北側の杉一馬橋通りは、工事車両が左折して出てきて中杉通りに向かうことになるので東端で混雑し、西側の出口でも混雑が考えられます。この道はもともと西行きの一方通行一車線の上、曲がりくねっていて見通しが悪く、車は徐行で通過している状態です。ここに工事用車輌が割り込むわけですから大変なことになるのではないかと思います。杉一小給食室の減増築は工事用通路の建設のためであり、児童の通学、学校生活に直接関係する工事ですから、来年以降の建設とはいえ、通路とその使い方、安全確保について明確に示し、保護者、学校関係者、周辺区民に説明し、同意を得ることなく工事を進めることは絶対に認められません。

【2】区内基幹4病院への減収補填について

私が10月6日の決算特別委員会で触れた「河北病院におけるボーナス減額問題」に関して、その後の同委員会でも質疑がありました。そこでの保健福祉部長と田中区長の答弁内容は非常に問題があると思いますので、あらためて私の意見を述べさせていただきます。

私は、医療を含め、介護、福祉、教育、水道など区民が生活していく上で必須不可欠な公的領域については、全面的かつ十分に予算が投じられるべき、という立場です。民営化や外注化などもってのほかです。逆に、オリンピック関連事業や阿佐ヶ谷再開発事業、西荻道路拡幅事業など無駄な予算投入はただちに中止すべきだと考えています。そうした立場から、私は4月20日の区議会臨時会で「区内4病院への23億円の区費投入」に反対しました。理由は以下の三つです。

一つに、「減収補填」という名目での病院経営への区費投入は、医療従事者の待遇向上には直結しないことが予想されたからです。二つに、コロナ感染対策が中長期的に求められる中、一度限りの区費投入が地域医療を本当に守り持続させることにはつながらないからです。三つに、区長が一方では「地域医療を守る」と言い、他方では小池都政が進める都立病院の独立行政法人化に反対しないというのは、まったく筋が通らないからです。

私の眼目は大きく2点です。4病院に投入された税金23億円はいったい何に使われたのか?ということです。そして、「医療従事者への支援」とはいったい何なのか?ということです。「減収補填」の名目で投入された税金23億円は、医療従事者を支援するためのマスクや消毒器具などコロナ感染予防対策費として使われたのか? 病院の施設整備に使われたのか? それとも病院資本の内部留保へと回ったのか? 区長、幹部職員の方々、どなたかその具体的内訳を公表していただけませんでしょうか? 区費を投入した以上、詳しい明細を明らかにし、実際の効果を検証し総括することは当たり前のことであり、それすら明らかにできない者が「区費投入は正しかった」と強弁すること自体が、区民、納税者、そして医療従事者へのとんでもない侮辱行為です。

先日、他の委員(公明党)は「財政措置でボーナスカットがされたのかされなかったのか、事実を明らかにしないと区民に申し訳が立ちません」と述べましたが、そこまで区民に“申し訳を立てたい”のであればなおさら、投入された区費23億円が実際に何を使われたのかを1円単位で調べるのが筋ではないでしょうか? 「医療従事者に支援を! 感謝を!」と言うのであれば、病院経営者(河北病院や衛生病院など)に対して真っ先に「医療従事者の賞与をカットするなんてとんでもない!」と、区費投入に賛成した立場からも全力で抗議すべきです。「ボーナスはカットされていない」という区長および保健福祉部長の答弁を引き出せれば、それで満足して区民に“申し訳が立つ”とお思いなのでしょうか?

コロナ感染症対策の最前線に立つ医療従事者の労働環境は悪化していないか、日常的装備は不足していないか、通常賃金は減らされていないか、「経営危機」を名目に不安定な非正規職雇用に置き換えられてはいないか――。「医療従事者への支援」とは観念的なものでもムード的なものでもなく、きわめて具体的な中身が問われます。そして何より、現場の医療従事者が真に求めているものでなければいけません。病院側が「とりあえず預かっている」のでは意味がありません。

投入された区費23億円が具体的に何に使われたのかを明らかにすることが、投入の是非を論議する一切の出発点です。それについて保健福祉部長は「なかなか聞きにくい」「直接は聞けない」、区長は「河北病院の収支のことに精通しているわけではありません」と述べました。このようなことがはたしてありうるのでしょうか? 政策の是非はさておき、たとえば国が銀行に救済支援資金として税金を投入した場合、その用途は相手任せで、こちらはまったくあずかり知りません、ということが通用するのでしょうか? もし仮に、今後、第二次第三次の区費投入をしようという話になった場合も、その用途は不問でカネだけを投入し続けるのでしょうか? それは、まったくデタラメかつ無責任です。

私がなぜ「河北病院における賞与減額問題」を取り上げたかというと、『東京新聞』の報道が唯一、23億円の区費を投入したことに関して検証できる情報だったからです。私がなぜ河北病院の夏の賞与の推移を職員から聞き取りしてボードをつくったのかというと、河北病院理事長、そして医療従事者が「夏の賞与は減額」と言っているのにもかかわらず、区が「減額されていない」と答弁したからです。

あのような、『東京新聞』紙上での河北博文理事長の「ボーナス減額」の放言を生み出したこと自体が、区費投入政策の失敗を証明していると私は考えます。河北理事長には、投入された23億円を医療従事者の待遇向上に使おうという気ははじめからまったくないからです。そして実際に、“周年記念のものを元に戻す”という名目で今年夏の賞与は減額され、コロナ感染症対策で多忙化・激務化したにもかかわらず、河北病院の医療従事者の待遇は改善されませんでした。杉並区は病院経営者だけでなく、何より現場の医療従事者の声を聞くべきなのです。それなしに「地域医療を守る」など空語です。

区長は「減収補填が当時の医療崩壊から病院を守った」と言いますが、医療崩壊を防いだのは区内基幹4病院だけでなく、区内の医師会が結束して対応したからです。特定の医療機関に限って支出された減収補填を、他の民間病院はどのように受け止めているでしょうか? 経営危機に陥っている病院は他にはないのでしょうか? 区はこうした実情を早急に把握することが必要です。さらに、「医療崩壊」を防いだのは、現場の医師、看護師はじめすべての医療・福祉従事者の献身的働きがあってこそと考えます。そのためには、労働者が安心して働き、生活できる保障がなければなりません。労働は強化されるが賃金は下がる、ボーナスは減額されるでは、病気や疲労で職場を去る人が大量に出てもおかしくありません。人がいなくて医療は成り立ちません。「病院の経営が成り立ってこそ」という理屈はもっともらしく聞こえますが、問題の立て方が逆なのです。人の命を救うのが医療であり、医療は最も基本的な社会保障であるべきです。「医療は人」です。「働く人に保障を」という要求は当然の主張です。私はこれからもあの23億円の区費がいったい何に使われたのか、本当に医療従事者の求める支援につながっているのかどうか、現場の声を聞き、議会で代弁していきます。

【3】都立病院独法化問題について

杉並区には都立・公立病院はありませんが、都立・公立病院に入院や通院する区民はたくさんいます。だから、都立病院の独立行政法人化は区民にとっても大きな影響を及ぼすわけです。

東京都病院経営本部が発表している『新しい人事給与制度原案』を都庁職労組病院支部が批判しています。以下、引用します。「原案では30歳で独法化され定年退職まで主事として勤務した看護師について、生涯年収が200万、またコメディカルについては1000万円下がると試算しています。…私たちは、一部組合員に必ず減収となる『原案』を受け入れることはできません。また多くの組合員にとっても生涯賃金がどうなるかは非常に不明確です。なぜならボーナスは『法人業績に応じて決定する』となっているからです。つまり業績が悪化すれば女子医大とおなじボーナスカットもありうるのです。…『原案』は、診療報酬改正に迅速に対応して稼ぐ病院になることが前提とされています。しかしコロナの時代において稼ぐ病院モデルは成り立ちません。そして都民が求めているのも稼ぐ病院ではなく、都民によりそう都立病院です」(都庁職『病院支部ニュース』20年8月19日付)。

つまり、都立病院独法化は医療従事者の賃金大幅減額につながる可能性がきわめて高いことが現場から告発されているのです。区長は「地域医療を守る」とたびたびおっしゃっていますが、ではなぜ都立病院独法化には反対しないのでしょうか? 医療従事者の賃金が減額され、待遇が悪化して、地域医療をどうやって守れるでしょうか? それとも、「地域医療を守る」は建前だけで、「稼ぐ病院」をつくることでは小池都知事と一致しているのでしょうか? ダブルスタンダードは現場には通用しません。

私は、医療従事者および医療労働運動に携わるすべての仲間と連帯して、医療・福祉・介護を守るために声をあげ続けます。

【4】働く人たちが人間らしく生きられる社会を

今年4月から始まった「会計年度任用職員制度」で、杉並区は2560人がその対象となりました。区職員の非正規職率が4割にのぼる実態もあります。これは、自然現象でもその人たちの自己責任でもなく、田中区政が正規職を減らし、非正規職を増やしてきたことの結果です。

コロナ禍において、労働のあり方そのものが問われています。ある保健所に勤める自治体労働者は、「厚労省からはひどいときには午前2時、3時や明け方にメールが届き、指針がどんどん更新される。現場対応しながらではろくに読む時間もなかった」、「5月頃から国は『検査を増やせ』『保健所の業務の負担軽減のために委託しろ』などの通知をバンバン出してきたが、そもそも検査を増やすために委託の手続きをする人員すらない」と語っています。保健師・看護師など常勤職員の不足が全国的にも大問題となり、それを逆手に取った会計年度職員・臨時職員の採用、民間委託・派遣労働者の導入が一気に進められています。しかし、現場で求められていることは、労働条件と職場環境の改善、賃上げと正規職の増員、施設・人員体制の拡充です。

人事院は10月7日、2020年度の国家公務員のボーナス(期末・勤勉手当)を0.05カ月引き下げて年4.45カ月とするよう国会と内閣に勧告しました。ボーナスのマイナス改定を求めるのは10年ぶりで、年間給与は平均2万1000円減る見通しです。公務員の賃金は労働者全体の賃下げにつながることから絶対反対です。区長も10月2日の答弁で「人勧と労使合意を尊重して決めていくべきものが公務員の給料だが、このかん特別区の人事院会をめぐって相当区長会の内部で議論があったことは事実」「23区の特別区の勧告は2年連続マイナス。1年目は区長会で蹴ったが2年目も私も含めて何人かの区長は相当議論をした」「私個人の意見としてはそもそも23区の人事院会は何を考えているんだと思っている。責任とってやめるべきだとはっきり区長会で言った」「人事院勧告は恣意的に操作をされてきた」「公務員の給料を下げると民間に必ず反映されていく」「私としては給料を積極的に下げるということを考える立場ではない。『労働の対価』としてきちっと払われるべき」と述べていましたので、コロナ禍における公務員労働者の賃下げは絶対に許さないという立場を鮮明に国と闘うべきです。

区長は、労働者の貧困・格差や非正規問題についてどう認識しているのでしょうか?「雇用の創出」「雇用の柔軟化」などは、手前勝手なご都合主義の言葉です。“本人が非正規職であっても親や親戚を頼れば何とか生きていける”と思っておられるのかもしれませんが、数十年前の高度経済成長基準で物事を見ること自体がもう通用しない時代です。現在もすでに、祖父や祖母が失業したり、親が非正規職になったり、という時代に入っています。もうすぐ、いわゆる“就職氷河期世代”が50代に突入します。両親も、おじいちゃんもおばあちゃんも、親戚みんなが非正規職か失業者、もしくは生活保護という時代に入ろうとしています。手取り15万円や20万円で、どうやって未来を描けというのでしょうか? どうやって食べていけばいいのでしょうか? それで子どもを産み育てられるのでしょうか? 人間らしい生活ができるのでしょうか? 労働者を食べさせることもできなくなった資本主義社会は、もう命脈が尽きています。9月に新たに登場した菅政権は「自己責任」=「自助」という言葉のもと、労働者にすべての矛盾を押しつけようとしています。また、菅首相と懇意の竹中平蔵氏は「ベーシックインカム」と称して、「月に7万円を全国民に支給する代わりに年金制度と生活保護制度をなくしてもいい」などと言っています。エッセンシャルワーカーをはじめ社会の根幹を担っている労働者や社会的弱者に、こうやって「弱肉強食」の論理で矛盾が押しつけられるあり方が間違っています。

「働く人たちが人間らしく生きられる社会」こそが、子どもたちや高齢者、障がい者、すべての人たちが豊かに人間らしく生きられる社会です。私は働く人たちが正規・非正規で分断される社会のあり方を根本から変える時だと思います。そのために、私は議会内で声をあげるとともに、この社会に怒るすべての人々と連帯し、ともに行動していきます。

                                        (了)

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