「子どもの権利擁護に関する審議会条例」に反対意見を述べました。

6月19日に杉並区議会第2回定例会が閉会しました。最終日に議案の採決があり、議案第39号「子どもの権利擁護に関する審議会条例」に、反対意見を述べました。ぜひ全文をお読みください。

 子どもの貧困、児童虐待、いじめは、資本主義・新自由主義にその根本原因があります。根っこにある問題を変えることぬきに、年に数回開催の審議会を設置しても、子どもと労働者家族をとりまく状況は変わらないどころか、むしろ固定化されます。子どもの貧困は労働者家族の貧困、とりわけ女性労働者の貧困と直結しています。新自由主義による社会丸ごとの民営化、非正規化、雇用・賃金破壊の結果です。放課後、アルバイトに追われる中高生は非正規労働者そのものです。

 「児童虐待」の報道のたびに、マスコミは親がいかに非道であったか、児童相談所がなぜ強権を発動しなかったかを責め立て、そこに至った背景を探ろうともしません。育児崩壊を、親の情愛不足や責任感不足とみなす社会通念はいまだ根強く、それが保護者個人への批判を生みますが、問題の解決にとって不毛です。

 年収122万円以下(月収10万円にも満たない)の「相対的貧困」世帯が15.6%。子ども(17歳未満)の7人に1人が貧困です。母子家庭の5割が非正規雇用です。「貧困と格差」は子どもや青年から人間的な誇りさえ奪い絶望へと駆り立てています。さらに非正規化・低賃金が労働者家族の貧困を生み出し、「貧困の連鎖」に子どもたちを追い込んでいます。

 特に、貧しさは日々の暮らしから物心のゆとりを奪い、そのしわ寄せが手間ひまや気づかいを要する育児に現れます。90年代から非正規雇用が急速に進み、地域的な相互扶助のネットワークが消えることで、生活難に加え、家族の孤立、子育ての孤立をもたらしています。育児崩壊を防ぐ道は、貧困をなくすこと、「子育ては社会全体で担う」という意識を共有して家族への手厚い援助をできるかどうかではないでしょうか。

 現に新自由主義が子どもや労働者に貧困と分断を強制し拡大し続けています。これまで保健師や看護師、保育士、教員、福祉・児相職員など経験を積んだ多くの職員が連携して子育てを支えてきました。その業務自体が人員削減と過重労働、民営化・非正規化の中で破綻の危機にあります。形ばかりの「児相組織の拡充」や、まして親への厳罰主義では問題は深刻になるだけです。社会を根本から変える以外に、誰もが人間らしく生きられる社会は実現されません。

 現代の「貧困」とかつての「貧乏」との大きな違いは、現代は共に支え合って生きる「共同性」がズタズタにされ、分断と孤立を強いられていることだと思います。民営化に反対し、非正規職をなくす以外に、子どもの貧困の解決はありません。子どもの権利を真剣に考えるならば、子どもたちの居場所であり地域の拠点を奪う児童館廃止を撤回するとともに、9割が女性労働者の杉並区会計年度任用職員を全員正規で雇うこと、子育てできる賃金、安心して休めて、働き続けられる職場環境をつくることが先決です。

 以上の理由から、議案第39号に反対します。

※写真は6月1日の一般質問のものです。

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