第3回杉並区議会定例会で一般質問に立ちました。(9月12日)

【1】原発汚染水の海洋放出と「放射能安全教育」について

 8月24日、岸田政権と東京電力は、全国・全世界の人々の反対を踏みにじり、福島第一原発から排出される放射能汚染水の海洋放出を強行しました。人類史上最悪の原発事故から12年。事故は今も収束していません。汚染水海洋放出は漁民の生業破壊の暴挙です。漁民が生活をかけて反対しているにもかかわらず、岸田政権が汚染水放出を強行したのは、福島原発事故を「終わったこと/なかったこと」にして、再び国家の総力をあげて核・原発政策の推進へ突き進むためです。すなわち、ウクライナと中国・台湾を焦点に世界戦争・核戦争が迫る今日の情勢下で、核技術と核エネルギーを独力で確保することが絶対的課題としてあるからです。その先に狙われているのは、アメリカとの「核共有」=核ミサイルの配備、新型原子力潜水艦の開発・導入、そして日本自身の核武装にほかなりません。

 海洋放出に対し、韓国や中国のみならず、米欧、東南アジア、ニュージーランドなど世界各地で抗議の声が上がっています。戦後に帝国主義諸国が核開発・核実験競争の舞台としてきた太平洋諸国の人々は、「太平洋を核にさらすな!」と、ひときわ強く反対しています。ビキニ事件と同じことが私たちの目の前で繰り返されています。原水爆禁止署名運動発祥の地である杉並こそが最先頭に立って、核と原発への怒りを圧殺する国と対決し、福島や世界の人々とともに、「放出即刻中止」の声を上げるべきです。杉並の住民、子どもたちの食の安全を脅かす暴挙である汚染水放出強行に対し、区長と教育長の見解を伺います。

 汚染水放出の問題点は一つに、福島第一原発から出ているのは事故により核燃料などが溶け落ちてできたデブリに直接触れている高濃度汚染水であり、通常運転中の原発の温排水とは全く別物です。デブリ冷却と流入地下水により、どれほどの核物質を含むかもわからない汚染水が1日あたり90㌧も生成されています。こんな水を海に流すなど、日本以外のどの国もやっていません。二つに、多核種除去装置(ALPS)で処理できるとしている放射性核種62種類すら完全除去には程遠い点です。「二次処理と希釈で基準値以下にして放出する」としていますが、放射能を流している事実は何も変わらず、タンク内放射能の総量も不明です。三つに、トリチウム被曝の危険性です。除去できないから安全ということにしようことでしかありません。四つに、政府・東電は「汚染水放出はデブリを取り出して保管する敷地を確保するため」と主張していますが、いまだ1㌘のデブリ取り出しすらできず、廃炉の展望は全く見えないのが現状です。

 そもそも、どの国の原発や核関連施設であろうと、トリチウムを含む一切の放射性物質のいかなる量の排出も許されません。核と人類は共存できません。汚染水放出に対し自治体として抗議すべきと思いますが区の見解を伺います。今、政府・マスコミ・野党までが一体化して「汚染水と言うな、処理水だ」と大合唱し、これに異議を唱えるものは「国賊」「中国の手先」とばかりの異様な排外主義キャンペーンを繰り広げています。櫻井よしこ氏による『日本の魚を食べて、中国に勝とう』という意見広告が典型ですが、汚染水放出に踏み切った日本政府に向くべき怒りの矛先を中国への「敵意」で塗りつぶそうとしています。

 国は2021年12月、「汚染水は海に流しても健康被害はない」という内容のチラシを教材として学校に直接配布しました。政府・東電の汚染水海洋放出を「正しい」と教え込むことが狙いでした。昨年3月の予算特別委員会で私が質問した際、区は「健康や環境への安全を確保するための基準を十分に満たした上で海に放出されているものと認識している」とし、「チラシを自主回収する考えはない」と答弁しました。昨年9月の杉並区議会第三回定例会の一般質問では、「チラシは東日本大震災によって避難している子どもたちに対して言われのない偏見や差別が起きている現状や、今なお放射線に対する不安や混乱、風評被害など解決しなければならない課題があることをふまえて、子どもたちが放射線に対する科学的な知識を身につけ理解を深めていくことを意図して作られたもの」と政府の立場から答弁しました。

 区はこのように一貫して、放射能被曝の実害を「言われのない偏見」や「風評」とかき消し、政府の原発汚染水海洋放出に向けた「地ならし」に協力・加担し、お墨付きを与えてきました。海洋放出強行によって、いじめの原因はなくなりますか? なくなるどころか、ますます増幅します。「薄めれば安全」、これは「健康被害になるほどの放射線量ではない」としてきたこれまでの「安全キャンペーン」よりも激しく「避難の必要なし」「被曝を気にする人間はナンセンス」という論理を増幅します。今後もチラシを使用するのか。直ちに回収すべきと考えるが見解を伺います。

【2】自衛官募集業務について

 8月7日に台湾を訪問した自民党・麻生副総裁は、台湾総統府での蔡英文総統らを前にした8日の講演で「日本、台湾、米国をはじめとした有志の国に、非常に強い抑止力を機能させる覚悟が求められている。戦う覚悟だ」「お金をかけて防衛力を持っているだけではだめなんだ。いざとなったら使う。台湾海峡の安定のためにそれを使う意思を相手に伝えることが抑止力だ」と発言しました。同行した鈴木政調副会長はこの発言について「政府内部を含め調整をした結果だ」と述べ、事実上の「政府見解」であることを認めました。

 自ら台湾に乗り込んで中国を挑発し、軍事的・戦争的対立を煽っておきながら、日本や台湾の人々に向かって「台湾海峡で中国を相手に戦争をやることを覚悟しろ」と恫喝しているのです。戦争を起こす支配階級・金持ちたちは安全な場所を確保し、絶対に自らの血は流さず、すべての犠牲を労働者人民に押しつけようとしています。自民党・麻生太郎副総裁の「台湾で戦える覚悟」発言への区長の見解を伺います。

 岸田政権による大軍拡と戦時体制づくりは、兵器の増強だけでは遂行できません。実戦部隊の確保・拡充が問題になっています。「戦う覚悟」を叫ぶ連中は絶対に戦場には行きません。実際に戦場に行かされるのは、「軍服を着た労働者」である自衛隊員です。自衛官の人員不足、応募者の減少の背景には少子化・若年人口の減少に加えて、第二次安倍政権による集団的自衛権の行使容認、安保法制制定による自衛隊の任務拡大と米軍との連携強化、岸田政権の安保3文書にもとづく長射程ミサイル配備による敵基地攻撃能力保有を柱とする大軍拡、台湾有事の危機感を煽る日米両政府などの動きに見られるように、自衛隊員が実際に戦場に送られ、他国の民衆に銃を向け、自らも殺されていく可能性が高まっている現実があり、若者とその家族の間にも不安が広がっています。杉並区が行っている自衛官募集業務や、区役所内で毎年開催されている自衛隊入隊・入校予定者激励会は、戦時中に自治体が「おめでとうございます」と赤紙を配った状況と同じです。自衛隊から対象者にどのような案内が届いていますか? 今年3月に行われた自衛隊入隊・入校予定者激励会の参加者を伺います。そのうち入隊・入校予定者の人数を伺います。岸本区長はどのような挨拶を述べたのか伺います。激励会は中止すべきと思うが区の見解は。

【3】マイナ保険証について

 マイナンバー関連改悪法が6月2日に参院本会議で成立しました。その柱は来年秋の健康保険証廃止・マイナ保険証への一本化、マイナンバーと預貯金口座の自動ひも付け、利用範囲の大幅拡大です。

 そもそもマイナンバー制度は「利便性向上」のためのものでも何でもありません。「マイナンバーを導入した本来の目的は、政府や自治体が個々人の収入・資産を的確に把握し、社会保障・税の負担と給付を公正にすること」(22年10月5日付日経新聞)です。保険証廃止・マイナ保険証の実質義務化は、マイナ保険証を利用しない・できない人を切り捨て、公的医療の枠組みからはじき出す「皆保険制度解体」です。マイナ保険証を取得しない人は自ら申請して有効期限1年の「資格確認書」を取得する必要があり、これがなければ無保険状態となります。障害者や高齢者に矛盾が集中します。

 医療・介護現場では、すでに矛盾が噴出しています。全国保険医団体連合会によれば、オンライン資格確認でトラブルが発生した医療機関は6割にも上り、エラー表示で10割負担となった患者が診察をあきらめる事態まで起こっています。  介護現場では緊急時受診などに備えて入居者から保険証を預かるケースが多いですが、マイナ保険証の場合はパスワードもあわせて把握・管理する必要が生じます。パスワードがあれば政府が運営するウェブサイト「マイナポータル」から納税や年金、医療に関する情報へのアクセスが可能となるため、現場労働者に課される責任は極めて重くなります。そもそも、マイナカード取得・マイナ保険証の登録はあくまで任意であり義務ではありません。

 さらに、医療情報をはじめあらゆる個人情報を国家が掌握し管理するマイナンバー制度は、徴税・徴用(戦時動員)・徴兵に直結します。歴史的にも、個人番号制度は戦争や「治安維持」と切っても切れない関係にあります。日本でも杉並区を含む多くの自治体が自衛官募集業務に協力している中、あらゆる情報がひも付けられたマイナカードは現代の「赤紙」(召集令状)そのものとなります。マイナ保険証の導入について各地で様々な問題が起きていることについて、区としてどのように認識しているか。マイナ保険証に反対すべきと思うが区の見解はいかがですか。

【4】会計年度任用職員制度について

 杉並区では2022年4月時点で会計年度任用職員の人数は2337人。そのおよそ9割が女性です。自治体全体を見ても非正規労働者は110万人を超え、4分の3が女性です。会計年度任用職員制度は、安倍政権時代に、自治労本部が協力することで成立した改悪地方公務員法と地方自治法を使って各自治体に導入されました。

 非正規職の「待遇改善」の願いを逆手にとって一層の雇用・労働破壊が進行しています。在職10年のベテランでさえ任期更新のたびに1カ月の試用期間で脅され、「従前の年収さえも確保できない事態さえ続出」と言われています。「月の手取りは平均15万から16万円という超低賃金。ろくな研修もなく仕事は丸投げなのに、公務員だからと、補助的ではない業務を常勤同様の責任で働いている」「常勤職員の業務補佐とされているがどこまでが補助的業務なのか」「補助的だったら低賃金で使い捨ててもいいのか」「常勤と同じ仕事をしているのに待遇が違うのはなぜか」という怒りが渦巻いています。

 常勤・非常勤ともに女性労働者から寄せられる声の一つに、「生理休暇制度は事実上、有名無実化していること」があります。常勤職員の生理休暇の取得率はどうなっているか。。また、会計年度任用職員の生理休暇の制度はどのようになっているか伺います。

 次に、雇用年限についてです。10年以上勤続する非常勤に支えられている杉並区です。雇用年限が存在する意義は、職員を固定化せず、いつでも解雇できるようにするものです。第二回定例会の一般質問の答弁で、「会計年度任用職員の勤務条件の見直しにつきましては、総務部の重要課題として、現在、人事課で東京都や他区における休暇制度や報酬額、再度の任用の上限回数の設定状況などを踏まえ、常勤職員とのバランスを考慮した見直し案を検討している」とありましたが、雇用年限の上限撤廃について現在の区の見解を伺います。

 杉並区男女共同参画行動計画(以下、行動計画)の中には、女性の管理職の割合が2割しかいないということはたくさん書かれていますが、区の4割にのぼる会計年度任用職員、その9割が女性であることには一切触れられていません。資本主義社会のもとでの「女性の活躍」は結局のところ、圧倒的多くの女性労働者が非正規雇用であるという現実は変えずに、管理職の座をめぐる蹴落としあいの椅子取りゲームに女性を動員するものでしかありません。能力主義による競争と分断です。行動計画はさらに、「出産・育児等で退職した女性の多くは就労を希望していますが、再就職しても非正規雇用になる傾向があり」だとか「女性の社会進出が進む中、働き続けるための環境は改善されていますが、結婚・出産・育児等で仕事を断念する女性は少なくありません」などと客観的なことを言っていますが、そのような認識があるのであれば、1年ごとに首を切られる超不安定雇用の会計年度任用職員制度を廃止し、希望する全員を正規で雇うべきではないでしょうか。見解を伺って質問を終わります。

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