杉並区議会第4回定例会での一般質問

【1】岸田政権の大軍拡と自治体の戦争協力について

*年末にかけて、来年度予算編成や安保関連3文書改定が重大局面を迎えます。岸田政権は、年内改定を予定する安保3文書の一つ「中期防衛力整備計画」に盛り込む2023~27年度の5年間の防衛省予算を、総額48兆円前後にまで引き上げ、年間の防衛省予算を実質2倍化にしようとしています。そして安保3文書では「反撃能力」の保有や武器輸出の全面化、巡航ミサイル・トマホークの購入、沖縄県の先島諸島へのシェルター設置、国内防衛産業の育成などが明記されようとしています。

*防衛省の来年度予算の概算要求は過去最大の5兆5947億円、この他に金額を明示しない「事項要求」が約100項目追加されました。青天井の軍事費大増額によって、三菱重工業を始め兵器産業に巨額のカネ=税金が流れ込み、政府・自衛隊と「死の商人」との結合・癒着が一層進もうとしています。これは労働者民衆の生活破壊と直結しています。大軍拡の財源は「社会保障の削減、増税、国債発行」(岸田首相の国会答弁)とされています。10月1日付産経新聞では「年間5兆円規模の新規財源を確保する場合、消費税なら2%増税が必要」「防衛費に比べて優先度が低い既存予算の削減も検討されそうだ」と報道されています。ふざけるな。すでに11月からは8833品目が値上がりし、来年も2000品目以上の値上げが見込まれる中、労働者民衆の生活をさらに破壊する大軍拡が狙われているのです。他方で国税庁は10月31日、「21年度の日本企業のもうけは79兆5千億円で過去最高額になった」と発表しました。コロナ禍と物価騰貴で苦しむ労働者民衆の対極で、資本家だけが空前の利益を手にしています。いま引き起こされようとしている戦争は、各国政府が「敵国の脅威」や「国土防衛」をあおり立てながら、実質は一握りの資本家の利益のために労働者民衆を互いに殺し合わせるものです。そこには何の正当性・正義性もありません。

<質問①>岸田政権の「防衛予算2倍化」について、区長はどのような見解をお持ちか?

*日本政府の大軍拡と戦争政策の大きな焦点が、沖縄県名護市・辺野古への米軍新基地建設政策です。すでに基地建設方針決定から四半世紀以上が経過しているにもかかわらず、不屈の抗議闘争が継続され、軟弱地盤なども見つかる中で工事は停滞・頓挫しています。沖縄県は2030年代以降に完成とされる基地建設費を2兆5500億円と試算していますが、沖縄の基地建設絶対反対の意思は鮮明です。労働者民衆から搾り取った莫大な税金を米軍の最新鋭の基地建設に注ぎ込むなど断じて許されることではありません。さらには、「国策・軍事政策には地方自治体は無条件に従え」という政府の姿勢そのものが100%間違っています。

<質問②>沖縄・辺野古新基地建設について自治体の首長としての見解を伺う。

*こうした中で自治体の自衛官募集業務も役割は一変しています。杉並区では区内に住む満15歳の男子、満18歳の男女、そして満21歳の男女を抽出した専用名簿を作成し自衛隊本部に閲覧させています。全国では「閲覧」のみならず名簿を自衛隊に「提供」する自治体が相次ぎ問題になっています。23区では板橋区と渋谷区です。「閲覧」自体が許せませんが、「提供」への踏み込みは自治体を「住民のための機関」から「戦争動員のための機関」に大きく転換するものです。

*「戦争は国政の課題であって区政とは無関係」「国防のことは国に言え(自治体の責任ではない)」などの意見をよく耳にします。しかし、戦争に反対することは、直接住民の命を守る自治体の当然の責務であり、「ミサイルからの避難」などを問題にするよりも、まず起ころうとしている戦争を止める行動が求められています。戦争に無縁な地域、職場、大学、地方議会、自治体は一つもないからです。軍事費倍増政策(+増税政策)と闘わずしてどうやって公共サービスの切り捨てを止められるでしょうか。自治体は政府・自民党の「下請け機関」ですか。自治体はお上の政策に従うだけの存在ですか。

*戦争が現実のものとして迫る中で、自衛官への応募者が激減。政府は自治体に協力を迫り、中には生活保護世帯・住民税非課税世帯の若者の情報を自衛隊に提供し、学校での勧誘や戸別訪問に手を貸す自治体まで出ています。貧困が広がる中での社会保障費削減と一体で、自衛官応募に誘導する「経済的徴兵制」が始まっているのです。

*米中対決が激化し、日米政府が対中国への戦争を構える中、南西諸島や日本全土が戦場になることが現実化しようとしています。米軍とともに「自衛」と称して具体的戦闘行動に参加し、大量に「殺し」「殺される」ことを想定した実戦訓練が激化しています。この自衛隊に若者たちの名簿を閲覧させることは、起きようとしている戦争に自治体として賛成・協力していることと同じです。「自衛隊法・地方自治法で決められているから仕方ない」と合理化・正当化するのではなく、むしろ杉並区として自衛官募集業務を拒否して政府に対して意見を述べていくことがあるべき姿なのではないでしょうか。

<質問③>杉並区では、自衛官募集事務をどのように実施しているのか、確認する。また自衛官募集事務についての区長の見解を伺う。

【2】会計年度任用職員制度について

*制度の核心は、1年(会計年度)ごとに「評価で解雇」できることです。つまり、「逆らう者は雇い止め」にすることが容易になる制度です。全国の自治体で「人員不足」「経費削減」を口実に、外注化・民間委託の拡大とともに、正規職を会計年度任用職員に置き換える動きが際限なく進んでいます。会計年度任用職員の賃金は最低賃金並みであり、生きていくことも難しい現実です。経験の必要な業務のほとんどを1年雇用に変えるなら保健所や福祉・保育職場をはじめあらゆる自治体職場の業務破綻が必至です。労働者の実態を知れば知るほど、この制度そのものの撤廃=全員の正規化しかありません。

<質問①>再度の任用の上限回数(雇用年限)を設けていない自治体は特別区でどれくらいあるのか。

<質問②>雇用年限を設けていない自治体で前回の区長答弁(職員の固定化・高齢化、新規採用の人数が減るなど)のような「問題」が発生しているのか。答弁はこうした他区の状況を調査し、それに踏まえたものなのか。

<質問③>会計年度任用職員制度導入から来年3月で3年が経ちます。全国自治体では「3年公募制」によって、約60万人が「雇い止め」になるという試算もあります。杉並区ではいわば「6年公募制」となっていますが、来年3月に雇用年限の限度を迎える職員は主な部署で何人いるのか。また、他の職場を含む杉並区全体では「6年満期」を迎える職員は何人いるのか。

<質問④>杉並区では2020年度末、3人のベテラン学校司書がふるい落とされた。この時は「杉並区での経験、実績を一切考慮しない」という異常なふるい落としが行われた。2021年度末には「他区が経験、実績を見て選考しているならば杉並区も同様に」として、満期を迎えた9人の学校司書が7年目へと採用された。来年3月で「6年満期」を迎える学校司書は何人いるのか。その際には杉並区における6年間の経験・実績は考慮されるのか。

<質問⑤>そもそも会計年度任用職員制度とは、自治体としての会計年度予算をもとに「毎年どれだけの職員を採用するのか」を決める制度と認識している。総務省見解では「会計年度任用職員は、あくまでも1年単位の職。前年の職と、次の年の職は違う職として整理している。単年度任用が前提なので、継続して任用されてきた人が再度の任用をされなくても、『雇い止め』には当たらない」となっている。つまり同じ職場で同じ職員が働いていても年度が替われば「別の職」とされている。制度そのものに大きな問題があると考えるがいかがか。

<質問⑥>一般質問の答弁では「処遇改善を行う」とのことだが、具体的にどのような検討がされているのか。現場の労働者の意見はどのように反映されるのか。

【3】自治体職員の労働問題について

*自治体秋闘が本番を迎えています。物価の急騰が生活を直撃しています。全労働者の一律大幅賃上げが絶対に必要です。しかし全国各地の人事委員会勧告は、これだけ物価高が進んでいるにもかかわらず、賃金による労働者の分断と、総体としての低賃金化を露骨に狙うものとなりました。労働者の生活などどうなってもいいと言っているに等しいものです。

*各地の人勧は初任給と若年層の賃金をわずかに上げるとしました。それでも初任給が最低賃金水準であることは変わりません。ましてベテランの正規職、再任用や任期付職員の賃金は据え置き、55歳昇給ストップはそのまま。定年延長による60代以降の低賃金に合わせる賃下げを検討課題としました。一時金は、能力・業績主義で差のつく勤勉手当だけを少し増やすとしましたが、「成績」次第で全く上がらない労働者が生まれ、勤勉手当の出ない会計年度任用職員はそこからも排除されます。それ自体が完全な分断・団結破壊であり、労働組合つぶしです。

*生活費の高騰が続き、全労働者の生活を締め上げています。10月21日に総務省が発表した9月の全国消費者物価指数は、前年同月比で3・0%上昇。生鮮食品を除く食料が4・6%、うち食用油は37・6%、食パンは14・6%の値上げ。電気代は21・5%、都市ガス代は25・5%という大変な上昇となりました。さらに今後もインフレが加速し、家計負担が破滅的なレベルに達する見通しとなっています。インフレは労働者階級全体への実質の大幅賃下げを意味します。だからこれを超える賃上げが絶対に必要です。

<質問①>特別区人事委員会勧告について区長の見解は?一律大幅賃上げが求められていると思うが見解は?

<質問②>定年を延長し、60歳前と同じ条件で働くのに、給与だけを7割にする事は同一労働同一賃金の考えに反します。引き上げ後の賃金が60歳を超えれば「60歳前の7割水準」になることは妥当なのか?区長の見解を伺います。

【4】放射能安全教育について

*第3回定例会・一般質問に対する総務部長と教育政策部長の答弁は許し難い内容でした。「言われのない偏見」「風評」などを並べて子どものせいにせず、「実害」と向き合うべきです。甲状腺がんになったと立ち上がった若者たちが実際にがんで苦しみ、過酷な治療に涙を飲みながら、壊された人生の責任を追及しています。これの何が「風評」なのですか?まったく許せません。これだけ危険な放射線被曝に対し、家を捨ててでも子どもを守るために親たちは避難を決断しました。この避難をあたかも必要のない「自主避難」などと切り捨て、金を要求しているような言いがかりで、加害者である国・東電が、被害者をいじめている。こうした政治がいじめの根本原因です。「避難は正しかった」、「大変な思いをした福島の人たちを包んで共に生きていこう」、「原発などもういらない」と自治体や教育がならないからいじめが起きているのではありませんか?「さして危険ではない放射線への偏見がいじめの原因であり、『放射線は危険ではない』と教えよう」というチラシは国によるいじめに加担するものです。

*なぜ、トリチウムの危険性を教えないのですか?放射性物質の中では弱いベータ線を出すとはいえ、細胞の分子結合の1000〜5万倍のエネルギーを発する猛毒です。しかも他の放射性物質にはない、水と入れ替わるという危険すらあります。有機化合物となって体内組織やDNAを構成すれば、トリチウムの崩壊→ヘリウム化で切断・破壊が起きます。なぜそのことを教えないのですか?命を守る側に立たずに何が「科学」ですか?

*福島原発事故は今も、水をかけ続けて再臨界を防いでいるだけの危機的状況が続いています。溶融した燃料(デブリ)の取り出しは8月25日に再び1年以上の延期が決定され、廃炉作業の見通しは立っていないのが現実です。事故当日に政府が出した、原子力緊急事態宣言も発令されたままです。原発事故による甲状腺がんなどの健康被害や、避難生活による苦しみ、放射能と向き合い、なるべく安全な食料を生産しようとする農漁民の努力、被曝労働で命を削りながら再臨界を防いでいる原発労働者、その全てに唾を吐きかけるように岸田首相は原発新増設を打ち出しました。二度と福島第一原発事故を繰り返させてはなりません。自治体として、教育委員会として、国と闘うべきです。

<質問①>教育政策担当部長の答弁について。「トリチウムは飲んでも大丈夫」とするチラシが「科学的」なのか? トリチウムの危険性について教える必要はないと考えているか?

<質問②>避難した子どもたちがいじめを受けたそもそもの原因と責任は全て国と東電にあると考えるがいかがか?

<質問③>チラシの回収を求めるがいかがか?

【5】阿佐ヶ谷をはじめとする再開発について

<質問①>全国的に行われている駅前をはじめとする再開発(JRの駅ナカ事業と一体となった駅前開発、超高層ビル建設、全国チェーン店舗が立ち並ぶ街並みなどに象徴される)に区長はどのような見解を持っているか?

*先日区長が発表した「下高井戸児童館の廃止」に区民の怒りが噴出しています。「予算がついているから方針変更できない」と言うのならば、阿佐ヶ谷再開発計画も道路計画も粛々と進めるのでしょうか。 目の前の下高井戸児童館を守ることが残りの26児童館を守る道だと私は思います。岸本区長を押し上げた力は、前区政への怒り、とりわけ阿佐ヶ谷再開発計画や都市計画道路、児童館全廃方針への住民の怒りだったのではないですか。たとえ議会で少数であっても、岸本区長を応援する多くの住民の思いを貫くべきではないでしょうか。

<質問②>区民の意見を無視して進めた前区長の阿佐ヶ谷駅北東地区まちづくりや都市計画道路の整備等の再開発計画を岸本区長はどう考えているか? また、再開発は区長の理念に照らすとどうなのか?お答えください。

<質問③>前回の一般質問でも述べた通り、激しい物価・建築費高騰の中で河北病院建替えや阿佐ヶ谷再開発を推し進めると、病院労働者の賃金や労働に矛盾が行き、医療の安全も脅かされると思うが、区はその責任を負うということか。あらためてすべての計画の撤回を求めますが、区長の見解は?

<質問④>「補助132号線」、「補助133号線」、「補助221号線」についても、議会で「事業の必要性」を述べていましたが、「住民の多くが反対」の場合でも計画を進めていくのか。

<質問⑤>高円寺北口の再開発計画については住民からの反対の声も多く長い間凍結されてきたと認識しているが、この際、計画を白紙に戻すということを表明すべきではないか?

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