杉並区議会第1回定例会での一般質問(全文)
【1】区長の政治姿勢について
(1)年明けからの世界情勢と岸田政権の改憲・戦争政策について
米バイデン政権はロシアからの北大西洋条約機構(NATO)不拡大の要求を全面拒否し、ポーランドに5000人規模の米軍空挺部隊を配置予定です。アメリカとロシアがいつ戦争に突入してもおかしくない状況です。アメリカをはじめとした帝国主義と、ロシアや中国などの大国が互いに「核の軍事力」をふりかざし激突していることは、日本帝国主義・岸田政権をますます改憲と中国侵略戦争、核武装へと突き動かしています。
岸田政権は2月1日、「経済安全保障推進法案」の月内国会提出を目指し、提言をまとめました。「国益」を掲げた経済統制で社会全体を戦争に動員する決定的な踏み込みであり、絶対に許せません。
また、バイデン政権は中国侵略戦争に向けた訓練も激化しています。米海兵隊は1月23〜28日、沖縄県内で対中国の新たな作戦構想「遠征前方基地作戦」に関連する演習を実施。さらに米軍那覇港湾施設では2月8日〜13日に米海兵隊約250人を動員し、オスプレイや大型輸送ヘリなどを投入した訓練を実施しました。沖縄県は、市街地や民間空港に隣接する那覇軍港での米軍機の発着について「基地の使用目的として想定されておらず、断じて容認できない」と中止を求め、地元からも怒りの声が上がっていますが、米軍はこれを無視して訓練を強行しました。
岸田政権は1月24日の衆院予算委員会で、敵基地攻撃能力を集団的自衛権として行使する考えを述べました。「密接な関係にある国」が交戦状態に入った場合、あるいは政府が「我が国の存立が脅かされている」と判断した場合には、日本が直接攻撃を受けなくても敵基地攻撃ができるというのです。それは他国への先制攻撃以外のなにものでもありません。
質問①:安倍政権以来一気に表面化している憲法改悪の動向は、岸田政権の下で現実的な動きとなっています。憲法改悪の具体的な動きは、安保条約・日米地位協定の見直しどころか、安保の野放図な展開、戦争準備と戦争挑発を現にもたらしていると考えます。自治体行政の責任者として改憲・戦争に反対の姿勢を明らかにすべきだと考えますが、区長の見解をお答えください。
質問②:南西諸島への自衛隊配備の増強、日米をはじめ軍事演習の強化、さらには台湾有事の扇動など、中国に対する戦争策動が緊迫するなか、社会全体で排外主義の煽り立てが現実に始まっています。区内には万を超える在日・滞日外国人が居住しており、排外主義の蔓延は憂慮すべき事態です。区長として排外主義を絶対に許さない、中国―アジアへの侵略戦争は絶対に繰り返さないという意志を鮮明にすべきと考えるがどうお考えか。
(2)沖縄をはじめとする在日米軍基地と新型コロナ感染症について
質問③:今年1月19日の第1回臨時会でも述べましたが、沖縄・山口(岩国)におけるコロナ―オミクロン株の爆発的蔓延の責任は、在日米軍基地の存在とこの間の激しい大演習、部隊移動等にフリーパスを与えた政府だと考えます。ただちにすべての在日米軍基地の閉鎖と演習の中止を米軍に求めるよう政府に申し入れるのが自治体の首長としてすべきことと思いますがどうお考えでしょうか?
質問④:在日米軍基地に関わるコロナ対策に、自治体が実質的に関与できないのは日米地位協定の存在があると考えますが、区長はどう捉えているでしょうか?
質問⑤:日米地位協定は歴史的にも現在的にも、憲法で定めた平和で文化的な生活をする権利とそれを保障すべき自治体行政の枠外にあって、特に沖縄では「戦争が終わっていない」現実を強制し続けてきたと考えますが、都内―首都圏にも多くの在日米軍施設が存在することから、区長として都や国に対して日米地位協定の根本的見直しと安保条約の破棄を求めるべきではないか?見解を求めます。
【2】新型コロナ感染症対応について
厚生労働省は1月24日、保育園の休園が同月20日時点で27都道府県327カ所に上り、「第5波」のピークだった昨年9月の185カ所を大きく上回ったと発表しました。医療・介護、保育、自治体などの労働者、とりわけ女性に矛盾が集中しています。岸田政権はこの現実を逆手にとり、「より柔軟な対応を可能とするため」と称してコロナの分類を2類から5類に引き下げる感染症法改悪を狙い、現在は国が全額負担しているコロナ治療費のかなりの部分を感染者の自己負担にしようとしています。小池都知事らの言う「感染を止める、社会は止めない」とは、休業補償と生活補償の全面放棄です。いわゆる「自宅療養」者は都内で9万人を超え、多くの人々が医者にもかかれず、ろくな補償もなく放置されています。
さらに厚生労働省は1月24日、40歳未満で重症化しにくい人は「受診せず自分で検査して自宅療養できるようにする」との新方針を各自治体向けに出しました。この方針を受けて東京都は、これまで保健所や医療機関が行ってきた自宅療養者への「健康観察」すらも縮小し、「50歳未満で無症状か軽症の人は自ら健康観察し、体調に変化が起きたら電話で相談を」とする方針に移行。病気になった時に医療を受けることは当然の権利であり、そのために人々は高い健康保険料を支払っていますが、医者にもかかるな、自己責任で治せというなら、もはや医療保険制度は崩壊しています。
杉並区は1月13日にBCP(業務継続計画)を発動し、保健所業務を支える職員確保のためとして郷土博物館・区立の3つの図書館・子ども子育てプラザを休館しています。感染急拡大に備えた判断とのことですが、そもそもBCPには「有事」の際には、区民の命を守るためには職員の諸権利やこれまでの労働慣行を壊してもやむなしという考え方が貫かれています。「命を守るため」と称して労働者を右から左に戦時的に動員することは現場に極めて大きな矛盾を生みます。
保健所の業務は、長年の知識と経験、各部署との連携が不可欠であり、対応する職員の安定した雇用と労働条件、十分な人員配置は大前提です。それはすなわち正規職の大幅増員以外には成り立ちません。
コロナ禍に入った2020年4月、杉並保健所は常勤職員が177人、非常勤職員が101人(そのうち91人が会計年度任用職員)の体制でした。旧衛生試験所は20年前と比較して、常勤職員が検査業務の委託化によって10人、業務の効率化=合理化によって6人、計16人が削減された状況でコロナ禍に突入したのです。
田中区長は施政方針演説で「新自由主義的な行革概念からの脱却」や「病床の確保という観点から都立病院独法化に一抹の不安」などと述べていますが、その言葉が本当ならば、ただちに区の会計年度任用職員を全員正規職員として雇用すべきであるし、都立病院の独立行政法人化に絶対反対の態度をうち出すべきです。1980年代以来の「新自由主義」とは、1)資本による無制限の「搾取・利潤追求」の要求であり、徹底的な民営化と規制緩和で資本の行動の自由を確保するものです。そして、2)労働者が歴史的に闘いとってきたあらゆる権利や法的保護を取り払い、総額人件費を削減しようとするものです。さらに、3)その典型的手法として「民営化」「アウトソーシング」「非正規職化」が推し進められてきました。また、4)労働者民衆が人間らしい生活を送るために必須不可欠である「公的サービス」(自治体、教育、医療・福祉、水道、清掃、郵便など)が新自由主義的「改革」のターゲットとなってきました。総じて、5)新自由主義的政策とは労働者・労働組合の団結を破壊し、社会的な連帯や紐帯をも解体して「資本にとって天国」の世界をつくり出そうとするものです。そこからの「脱却」を唱えるならば、区長は具体的にこれまでの区行政の何を改めようとしているのか明示に表明すべきです。それなしの「新自由主義的な行革概念からの脱却」など、ペテンであり、ごまかしです。加えて、都立病院独法化に「一抹の不安」を抱くのであれば、そもそも自民党政権下、そして小池都政下で進められてきた大規模な病床削減計画に区として真っ向から反対すべきです。このことを私はこれまで議会で再三再四訴えてきましたが、区長は一度もこれに答えませんでした。独法化直前になって「一抹の不安」を表明してお茶を濁すことなど、私は断じて認めません。
質問①:コロナ禍以前と後では保健所の体制はどのように変化したのでしょうか。2019年度、2020年度、2021年度、保健所に勤務する職員の人数、常勤・非常勤の人数とその割合をお答えください。(人事課)
質問②:保健所職員のコロナ禍での勤務実態について、第5波にあたる昨年7〜9月と第6波の途中経過として今年1月の時間外労働の1ヶ月最長時間の例とその超過勤務手当の額を伺います。(職員厚生担当)
質問③:1月以降の保健所への全庁的な応援体制で何人が派遣され、そのうち図書館などの休止施設からは何人が派遣されたのでしょうか。また、応援業務の内容や、派遣期間について伺います。(人事課)
質問④:緊急事態宣言などで区施設が休館になった際、委託事業者や指定管理者のもとで働く労働者に休業手当てが支払われているかについて区は把握しているか。区の都合による休業で手当てが支払われないということはあってはならないと思いますが区の見解はいかがでしょうか?(行政管理担当)
質問⑤:コロナ感染が継続し、人員不足で医療・福祉をはじめ自治体業務の破綻が差し迫っています。現場が回らず超過重労働が恒常化し、業務の崩壊は住民の命の問題に直結します。そして職員への「応援・兼務」辞令の乱発と非正規職・民間委託の拡大は一層の危機をもたらすと考えます。保健所や医療・介護施設、そして保育所、学校、学童保育・児童館などでは、一時も気を抜けない緊張と過重な労働が続いています。多くの職場でコロナ応援の職員が抜けて欠員状態が深刻化し、長時間の残業が強いられ、過酷な労働で病休・離職者が増えています。社会に必要不可欠な業務が絶対的な人員不足に陥っているのです。2年に及ぶコロナの緊急事態、蔓延防止、オリパラ業務などは、区の職員に肉体的精神的な過度の負担をもたらしていると思います。病気休暇や精神的な原因による休暇休職を増加させてはいないか。病気休暇休職の人数、増減、その内メンタルを原因とする休暇休職の人数、増減についてお答えください。(人事課)
質問⑥:昨年多くの反対の声を押し切ってパラリンピック学校連携観戦を強行したことについて、区長は施政方針演説で「絶対に安全はない」「白か黒かという極論は全体主義」「危機を恐れて思考停止に陥ってはならない」などと述べていますが、そもそも児童・保護者・教育労働者および関係者の安全確保を最優先に考えるのが行政のなすべきことであって、それを学校連携観戦と「天秤」にかけるような考え方自体が間違っています。実際、パラリンピック期間中の9月1日には療養者は21万人に迫る(うち自宅療養16万3千人、病院にもかかれず自宅死を強制された人も多数)という前代未聞の状況の中、まったく当然にも学校連携観戦には抗議や怒りの声が集中し、128万人の観戦動員計画は、五輪4700人、パラ1万5330人に封じ込められました。これを「全体主義」「思考停止」などと罵る区長の姿勢がいかに区民の思いとかけ離れた異常なものであったのか、ということです。学校連携観戦について、抗議の電話やメール・ファックスは何件あったのか。合わせて、学校現場ではどのような声があったのかお答えください。(済美教育センター、庶務課)
質問⑦:区内4病院への減収補填は田中区長が言うように「病院経営のサポート」であって医療労働者が真に求めるサポートでなければ意味がありません。区内4病院に減収補填として支払った包括補助金について、予算額と支払額はいくらか。また、支払った額が何にどのように使われたのかを把握しているか伺います。(杉並保健所特命事項担当)
【3】会計年度任用職員制度について
会計年度任用職員制度は今年4月で制度開始から2年を迎えます。この2年間はコロナ禍の2年間でした。杉並区では会計年度職員が全体のおよそ5割に達し、コロナ化で多忙化する自治体業務を支えています。全国でも窓口業務の大半は会計年度職員や派遣社員が担っています。福祉職場でケースワーカーの補助に当たる業務は、パートタイムの会計年度職員が10割のところも増えています。「非正規の処遇改善」の名目とは真逆の〈1年雇用、試用期間1カ月、毎年試験か評価で振り落とす〉という不安定雇用です。会計年度任用職員は「常勤職員が担う業務の遂行を補佐する職」と言われていますが、「どこからどこまでが『補助的業務』なのか」「『補助的業務』だったら低賃金で働かせていいのか、1年雇用で使い捨ててもいいのか」「常勤とまったく同じ仕事をしているのに待遇が違うのはなぜなのか」というまっとうな怒りが現場には渦巻いています。自治体業務は対面が基本であり必須の仕事です。どの職種においても長年経験を積める正規職員が求められています。
質問①:そこで伺います。区としてこの制度導入の2年間をどのように総括しているか。私は制度開始前の2019年9月11日に一般質問でこの問題を取り上げました。総務部長は答弁で、制度導入の目的について「臨時・非常勤職員の適正な任用、勤務条件の確保を目的としており、常勤職員の非常勤化を進めていくものではない」と述べましたが、常勤化を望む人が常勤化されていない現実があります。この制度が「官製ワーキングプア」を生んでいるという認識はあるのか。現場の声は届いているのでしょうか。(人事課)
質問②:2020年度、2021年度の会計年度任用職員の人数、配置状況について教えてください。(人事課)
質問③:この2年間で、6年間の更新期間終了後、再度公募に応募した方のうち、採用されなかった人数について伺います。報道にもあった杉並区の学校図書館司書雇い止めについて杉並区の見解を述べてください。(人事課、教育人事企画課)
質問④:会計年度任用職員は補助的どころか実際には現場の重要な役割を担っています。例えば、学童クラブでは障がい児の入所を会計年度任用職員の増員で対応しています。これのどこが「補助的」業務なのか?杉並区で働くおよそ2500人の会計年度任用職員が一体なぜ、正規ではなく1年更新の不安定雇用なのか。全員を正規で雇うよう求めて質問を終わります。