杉並区議会第1回定例会で行った一般質問の要旨です
2月12日から杉並区議会第1回定例会が始まりました。2月14日に行った一般質問の要旨を掲載します。
【1】区長の政治姿勢について
2月2日、海上自衛隊の護衛艦「たかなみ」が、200人近い自衛官を乗り組ませて、横須賀基地から中東に向けて出港しました。派遣自衛官の家族は、「子どもが生まれて間もないのに不安でたまらない」と嘆いていました。なぜ中東にまで行かなければならないのか、現場の自衛官―家族に納得できる答えはありません。まさに理不尽な派遣です。
安倍政権は今回の自衛隊派遣について、防衛省設置法にもとづく「調査・研究」と称しています。法律を得手勝手に拡大解釈し、国会の審議もなしに閣議決定だけで派遣を強行しました。1月11日には海上自衛隊名は航空基地から飛び立ったP3C哨戒機2機に続いて、護衛艦「たかなみ」を「戦地」である中東ホルムズ海峡近辺に出動させました。
米トランプ政権によるイラン革命防衛隊司令官殺害で、中東は一気に戦争情勢が切迫しています。この状況下での自衛隊の出動は客観的に見て、とりわけイランおよび中東の民衆にとっては、まぎれもない「派兵」であり「出兵」です。
そもそも今回の派兵は、米トランプ政権による有志連合への参加要請を断る代償として、防衛省設置法に規定する「調査・研究」とこじつけて強行されました。イランおよび中東の反米勢力から見れば、米国を中軸とする有志連合の一翼を担う戦力ととらえられて当然です。状況次第では自衛隊法にある「海上警備行動」に切り替えると明言されており、河野防衛相は1月17日の国会答弁で、「ホルムズ海峡での活動も排除しない」と断言しています。戦闘行動に参加することが明確に想定されているわけです。
安倍政権が現に強行している自衛隊派兵は、誰がどう見ても憲法違反です。こんな状況のなかで、「戦地」に無理やり行かされる現場自衛官の想いはどうであろうか。幹部自衛官の間でも、「こんな曖昧な形で部下を戦地に投入できるのか。官邸はあまりに無責任だ」といった声があると聞きます。安倍首相にしてみれば、自衛官が戦闘行動に巻き込まれて戦死するような事態が起これば、ここぞとばかりに「改憲が必要だ」とでも叫び声をあげるつもりなのでしょうか。自衛官は改憲のための人柱ではありません。
そこで質問します。
①改憲についての立場性を問う質問に対して、区長は憲法の尊重擁護義務を盾にして明言を避けてきました。しかし、今回のような憲法違反が明白な自衛隊の中東派遣には反対の立場を示すべきと思いますが区長の見解はいかがでしょうか?
②杉並区においても自衛官募集業務に協力しているが、具体的にはどのような形態で実施しているのかお答えください。住民基本台帳の閲覧に関して、自治体によっては高校卒業生を抜き出して一覧表にして自衛隊に提供しているところもあると聞いているが、杉並区の実状はどうでしょうか。また、区内の高校で行なわれている自衛官募集業務について、区は把握しているのでしょうか?
★自衛官募集業務への協力のみならず、自衛隊の様々なPR事業への協力も行なっていると考えるが、杉並区で生まれ育つ子どもたちを戦地に行かせるようなことが現実になろうとしています。自衛隊のリクルート活動やPR活動への協力は抜本的に見直すべきだと思います。
【2】阿佐ヶ谷再開発について
2019年8月末の土地区画整理事業の事業認可、さらに10月末に杉並第一小学校と河北総合病院の土地の仮換地指定が矢継ぎ早に行われ、住民の不安と怒りはますます広がっています。とりわけ仮換地指定については区がどの地権者とどのような内容で仮換地を行ったのか、何も明らかにされていません。区民の共有財産である学校の土地を勝手に処分しておきながら、すべてを隠しているのです。
情報開示請求で取り寄せたところ、仮換地の明細図(区以外の地権者のもの)が、すべて墨塗りで出てきました。現在の河北医療財団の土地はどこに行ったのか。アールスリー(株)の土地はどこに行ったのか。まったくわかりません。換地処分は10年後とされていますが、区は今後10年間、内実を明らかにしないつもりでしょうか。
さらにこのかん明らかになったことは、株式会社佐藤総合計画が2017年1月に区に提出した「阿佐ヶ谷駅北東地区大規模敷地活用に関する調査業務委託」と題する報告書の存在です。
佐藤総合計画は2016年6月に杉一小の複合施設案の調査・業務委託先に選ばれ、区は8月に佐藤総合計画に発注しましたが、同月に河北病院が現在のけやき屋敷の土地に移転・建て替えを表明。これを受けて、2016年12月には契約書の内容が変更され、突如として、杉一小の河北病院跡地への移転が打ち出されます。この翌月、2017年1月に佐藤総合計画の報告書が提出されました。
報告書では杉並第一小学校跡地活用構想や阿佐谷けやき公園敷地を活用した阿佐谷地域区民センター及び産業商工会館の移転・複合化の検討に加えて、杉並第一小学校移転建て替え計画(A案とB案の検討比較表)が出されています。
報告書で指摘されていることは、B案(杉1小の河北病院跡地への移転)はひとつに、学校開設時期が約7年遅れること、ふたつに、学校の計画・スケジュールが民間敷地の移転計画に大幅に左右されること、みっつに、病院跡地の土壌汚染の場合、学校開設時期がさらに遅れるリスクがあること、よっつに、建設地である病院跡地は浸水地域であること、いつつに、改築が大幅に遅れるため既存校舎の老朽化が深刻で改修必要であること、むっつに、水害や災害時に敷地全体が浸水する危険性があり震災避難所として不適切であること、ななつに、木造密集地で震災火災時、延焼・類焼の恐れがあること。大規模な地震発生時の震災救援所避難者の建物安全確認までの待機場所は校庭となること。やっつに、病院跡地への学校移転に伴う近隣苦情の可能性が大きいこと。さらに、北側校庭・南側校庭どちらにしても日陰問題があることや、近隣住民の生活環境への影響について十分な配慮が必要と記載しています。
以上の内容はあくまで「学校にとって、子どもたちや住民にとってどうか」を視点とした報告書であり、十分検討し公表すべき重要案件です。しかもここで指摘されていることは、このかんの説明会で住民が何度も何度も指摘してきた内容とまったく同じです。佐藤総合計画の報告書や、住民の反対意見など、計画に不都合なものを全部無視抹殺して、事業認可と仮換地指定を強行した区の姿勢を怒りを込めて弾劾します。これほどのビックプロジェクトで計画時に基本的なアセスメントがないとは、ずさんとしか言いようがありません。
しかも、この報告書が提出された翌月2017年2月24日の総務財政委員会で、B案の検討が報告されましたが、佐藤総合計画の報告書については何も触れられませんでした。当時の施設再編・整備担当課長はB案検討の理由を「今回阿佐ヶ谷のまちが大きく変わる可能性が出てきた」と述べています。一方、B案のデメリットについて当時の学校整備課長は「A案よりも7年ほど改築計画が遅れる」とだけ述べ、佐藤総合計画の報告書で指摘されている内容については一切触れていません。
情報隠蔽と三者による「個人共同区画整理事業」への不可解で強引な転換。ここに阿佐ヶ谷再開発の重大な疑惑があります。
杉並区自治基本条例・第19条の説明責任について、「区は、政策の立案から実施及び評価に至るまでの過程において、区政について区民等に分かりやすく説明する責任を果たすよう努めなければならない。」とありますが、実際に区がやっていることは墨塗りと情報隠蔽です。
2月11日付の毎日新聞朝刊に、沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画で、軟弱地盤が見つかった埋め立て予定海域について防衛省が国会などで説明していた調査結果とは別のデータが存在することが判明しました。固い地盤があるとして調査しなかった水面下70メートルより下も「軟弱」である可能性を示す内容です。自分たちの計画に都合のいい調査結果を採用して、不都合な調査結果は隠蔽する。国も杉並区もまったく同じことをやっているわけです。情報隠蔽によって区の情報への信頼は地に落ちました。土地評価の調査だって信じられません。
何より許せないのは、10年後、20年後にはこの計画の責任者は田中区長を筆頭に現在の役職から離れている可能性があり、誰も責任をとらない、とれない、とらなくてもいい体制がつくられていることです。子どもたちや住民の生活と命がどうなろうと、あとはどうなったってかまわないという区の態度に腹が立ちます。
浸水の危険性について、区は「第二桃園川幹線の整備が行われれば問題ない」という旨の答弁を繰り返していますが、2月9日と10日に都の下水道局による第二桃園川幹線整備事業の説明会に参加したところ、たとえ整備が完了しても対応できるのは既設の阿佐谷貯留施設と合わせても毎時50㍉の雨までだそうです。50㍉をはるかに超える記録的大雨が降れば、旧桃園川流域も浸水する危険は十分あるにもかかわらず、「心配ない」と強弁する区の主張の根拠はどこにあるのでしょうか?
この計画で一番の影響を受けるのは住民、何より子どもたちです。杉一小の建て替え計画が河北病院と地主の鶴の一声によって玉突きの土地区画整理事業となり、土壌汚染・軟弱地盤・浸水地という最悪な場所に学校を移転するという最低最悪な計画を行政が行うなど言語道断です。子どもたちを犠牲にして強行される再開発計画はただちに白紙撤回すべきです。その立場から区の見解をお尋ねします。
➀佐藤総合計画が提出した報告書では杉一小建て替え方針についてどのような報告がされたのか。河北病院跡地への移転についての評価はどのような中身であったと認識しているのか。
➁報告書について区はどのような対応をしたのか。
③森を潰し、子どもたちを土壌汚染・軟弱地盤・浸水の可能性のある場所、しかも住民の命にもかかわる避難所をそのような場所に移転させてまで、杉一小跡地に駅前ビルが必要なのでしょうか?子どもたちや住民への影響を危惧する報告書を握りつぶしておきながら、一体何が「にぎわいの創出」なのかと思います。「首都直下型地震がくると予測されているのに高さ60mの建物を建てるなんて恐ろしい」という住民の意見に私も同感です。
④「みどりの保全について」です。阿佐ヶ谷の貴重な緑を守りたいという声が多く寄せられます。人間の生存にとって必要不可欠の緑・緑地を大幅に減少させるような計画が出されていますが、区の緑地保全方針と矛盾していると考えますがいかがでしょうか。お答えください。