杉並区議会第4回定例会での一般質問です

みなさん、こんにちは。
11月19日から定例会が開催されています。私は11月20日に一般質問に立ちました。テーマは大きく4つです。内容を紹介します。



【1】人事委員会勧告について

10月21日、東京・特別区人事委員会は、月例給平均2235円削減という大幅賃下げ勧告を行いました。昨年の1~2万円賃下げ勧告に続く2年連続の事態です。昨年の秋闘では4万人を組織する特別区職員労組連合会と4500人の東京清掃労組が総力で闘い、ストライキの力で最悪の人勧実施を阻止しました。
国家公務員への人事院勧告や全国の自治体の人事委員会勧告は、民間賃金との比較でごくわずかとはいえ賃上げを求めています。それに対して、物価・家賃などが全国で最も高い東京・特別区の人事委員会だけが基本給の大幅マイナス勧告を行ったのです。
10月からの消費税増税と医療・介護保険料などの軒並みアップで生計費が大幅に増えています。10月から東京の最低賃金は1013円に上がりました。にもかかわらず、マイナス人勧とは東京23区の自治体労働者を狙い撃ちする賃金破壊・生活破壊です。しかも、公務員の賃下げは労働者全体の賃金水準を引き下げる役割を果たし、民間労働者にも波及することは必至です。
昨年4月に導入された特別区の新人事制度は、それまでの多くの主任・係長級職員を下位に落としました。その状況は今年も変わっていません。人事委員会はそこにつけ込み、昨年と同様に役職の低い民間労働者との比較を行うことで、再び大幅賃下げを勧告しました。
同時に、新規採用者の初任給だけは「人材確保の観点から据え置き」としましたが、高卒新採労働者の時間当たりの賃金は、地域手当てなどを含めなければ最低賃金以下です。賃金は評価制度や試験で昇級・昇格しなければわずかしか上がりません。それも50歳で頭打ちです。多くの青年が多額の奨学金返済を抱えているなかで、青年労働者には初めから「一生低賃金」が押しつけられ、希望を見いだせず離職を余儀なくされる青年が膨大に生み出されています。基本給引き下げは、それを一層進めることになります。
特別区人勧は大幅賃下げの一方で、一時金は「勤勉手当」の形で増額するとしていますが、この「勤勉手当」こそ、「勤勉かどうか」を管理職が評価・判断して、手当額をプラスにもマイナスにもできるという許しがたい仕組みです。労働者は管理職に対し意見を言えなくなり、わずかの原資をめぐって労働者同士が競争させられるのです。
人事委員会はこの勤勉手当のアップで「年間給与は約2万2千円の増」と強弁していますが、基本給を大幅に下げることと評価制度に基づく勤勉手当を増やすことはまったく違います。基本給はすべての基準です。基本給削減はイコール生涯賃金の削減であり、現に退職金だけで14万円も減らされる職員が出ています。非正規職をはじめ職場の全労働者の賃下げに直結しています。
10月11日、安倍政権は自治体に国や民間を上回る賃金分の削減と評価制度の徹底を求める閣議決定を行いました。公務員を水路に賃金破壊を進めようというものであり、その意を受けて特別区人事委員会が極悪の勧告を出したのです。これまで人勧制度は公務員労働者のストライキ権など労働基本権制約の「代償措置」であるかのように言われてきましたが、その制度を人事委員会自ら踏みにじっています。今回の人事委員会勧告について、区長の立場をお尋ねします。

(1)特別給の引き上げはあるものの、月例給は2,235円引き下げのマイナス勧告となっています。労働者全般の低賃金化が世界的な問題となっており、賃金の上昇こそが求められているなか、2年連続のマイナス勧告を区長としてどのようにとらえていますか?

(2)特区連三役の要請に対して23区長会・山崎会長は、昨年の大幅賃下げ勧告が実施されなかったことから、2年連続の勧告見送りは不都合であるとの趣旨を答えているが、区長の見解はどうでしょうか?

(3)本年10月11日安倍政権は「公務員の給与決定に関する取扱いについて」を閣議決定し、国や民間を上まわる賃金の引き下げを求め、評価制度の徹底にまで言及した。政府が自治体の給与体系にまで口を挟むのは異例中の異例であり、地方自治を踏みにじり、自治体労働運動をつぶそうとするものだ。こうした安倍政権の動きに対して、自治体の長としての区長の見解をお答えください。

(4)そもそも人勧制度は、公務員労働者から争議権を軸とする労働基本権が奪われている代償として、第三者機関とされる人事院ないし人事委員会が賃金引き上げを勧告するものとされてきた。マイナス勧告は制度そのものを否定する暴挙だ。制度そのものが機能不全を来しており、自治体労働者にも労働基本権が全面的に認められるべき状況にあると考えるが、区長の見解を伺います。



【2】東京オリンピックについて

安倍首相が「福島第一原発の汚染水はコントロールされていて、健康被害はこれまでもこれからも起こらない」と大うそをついて招致した東京オリンピックに、人民の怒りが広がっています。「復興五輪」と称して実際にやっていることは、労働力と資材を東京の競技会場づくりに集中させることであり、福島県民への被曝と帰還の強制です。さらに、オリンピックのための道路を通すために築地市場から労働者を排除し、毒の土壌の上に立つ豊洲市場に移転させました。共謀罪の新設も入管法の改悪もオリンピックを理由に強行されました。真夏の酷暑の中での開催は、資本の利益が選手や観客の命よりも優先されていることを示しています。
11万人にのぼるボランティアは、1人当たり10日間も拘束され、交通費・宿泊費・食事代は自腹で、代わりにわずか1000円のプリペイドカードが渡されるだけ。国家の事業に国民を動員し、そのことに対価を支払わないで当然と開き直っています。

今年5月15日に、2020年東京オリンピック・パラリンピック大会の競技会場などの建設現場で働く労働者が危険で過酷な労働環境にさらされているとして、国際建設林業労働組合連盟(BWI)が「2020年夏季東京オリンピックの影の側面」と題する報告書を公表しました。
報告書は、複数の建設現場の視察と、新国立競技場と選手村の建設にあたる現場労働者からの聞き取りに基づいて劣悪な労働環境の実態をまとめています。報告書が明らかにしたものは、外国人労働者を含む労働者の安全と命が脅かされ、権利が著しく侵害されているという事実です。たとえば、調査を行った労働者のうち約半数が雇用契約ではなく請負契約であること。選手村では月28日間連続、新国立競技場では月26日間連続勤務した労働者がいたこと。作業員の中には安全装備を自分で購入させられた者もいたこと。薄暗い中での作業により大けがを負ったことについて労組が日本スポーツ振興センターに申し立てた通報を、「(被害を負った)労働者本人によるものではない」という理由で却下したことなどです。
さらには、外国人技能実習生が原料運搬などの単純作業ばかりやらされている、処罰または職を失うことを恐れ苦情を申し立てられない「恐怖の文化」、通報制度は機能していないことなども挙げています。
2017年4月には新国立競技場の地盤改良の作業管理を担当していた23歳の青年労働者が過労自殺に追い込まれました。亡くなる直前の2月の残業時間は211時間56分でした。この悲惨な死にもかかわらず、命を脅かす長時間労働が現在も横行しています。
今年4月1日に施行された「働き方改革」関連法は「繁忙期の残業時間」を月100時間までして良いと認めました。労働基準法を解体し、脳・心臓疾患や過労死を招く危険な長時間労働を合法化するものです。それすらも建設労働者は五輪工事期間の全てを含む5年の間、適用を除外されました。建設業は過労死で亡くなる労働者が2番目に多い業種であるにもかかわらず、です。仮に含まれていたとしても、下請けには適用が猶予されており、大多数の建設労働者は除かれているのが実態です。
過労自殺を含め現在までに3人の労働者が五輪建設現場で亡くなっています。うち1人は選手村建設にあたっていた労働者で、昨年1月、荷下ろしのクレーンと足場の間に挟まれ死亡。昨年12月には選手村で労働者が転落死し、昨年末までで10人が、8日以上休業の大けがをしています。
さらに重大なのは、安倍政権が新たな在留資格「特定技能」を設け、5年間の期限付きで34万人を超える外国人労働者を導入しようとしていることです。安倍政権は、移民政策はとらないと定住を認めていません。
建設業に従事する外国人技能実習生が死亡する割合は他の労働者の2倍であり、オリンピック建設現場において労働安全衛生上、必要な対策はとられていません。そしてオリンピック工事後は使い捨てられようとしているのです。
報告書によれば、都の代表はBWI派遣団との面談で「移民労働者は現場に1人もいない」と主張しましたが、翌日、派遣団が都の管轄するカヌー・スラローム会場を訪問すると、多くの移民労働者が働いていました。安全装備や処置について、日本語以外の言語での説明などの特別な対策はとられていなかったそうです。報告書は、「最重要のステップは、雇用形態にかかわらず全ての労働者の、労働組合の組織化と団体交渉の自由を積極的に促進することだ」という要求で結んでいます。
大会組織委員会と東京都は、大会期間中の都内の首都高速道路の「混雑緩和のため」として、午前6時~午後10時の自家用乗用車などの通常料金に千円上乗せする方針を決定。その一方で午前0時~4時はETCを搭載した車は全線で半額となりました。多くの自家用車が値上げされた首都高を使わず一般道に来るため、渋滞が引き起こされます。通勤や物流に大混乱と負担増加がもたらされ、さらに膨大な運輸労働者に深夜労働が強制されることは重大です。
さらに、都営交通・東京メトロ・JRは終電時間を繰り下げ、午前2時過ぎまで電車を走らせるとしています。これはすさまじい労働強化と安全破壊をもたらします。にもかかわらず、労働組合を無視し、一方的に決められたことは許せません。

しかも、都営交通は駅、乗務、バスのそれぞれで要員不足です。欠員、バス運転手の10%賃金カットの中で、「現場はオリンピックどころではない!」という怒りの声が噴出しています。3月の東京交通労組電車部大会では「東京2020大会への協力など、到底不可能」と決議文に明記されました。
東京オリンピックに反対の立場から、2点質問します。

(1)当区のオリンピック関連に従事する職員の体制はどのようになっているでしょうか?

(2)東京都はボランティア体験を希望する中学生と高校生を募集していますが、実際には具体的な人数が学校ごとに割りふられ、学校によっては強制的に参加を求めていることが報道されています。杉並区の児童・生徒のボランティア参加の実態はどのようになっているのでしょうか?



【3】阿佐ヶ谷再開発について

杉並第一小学校の河北病院跡地への移転に反対する立場からいくつか質問します。
杉並第一小学校は現在、震災時や風水害時の避難所に指定されていますが、これは、付近の土地より高く、子どもたちの安全の面でも、避難所としても意味あることだと考えます。
しかし、小学校が今よりも低い河北総合病院跡地に移転させることは子どもたちや住民の安全の点で決してやってはいけないことです。また、避難所も河北跡地に移転するのだと思いますが、河北総合病院の一帯はハザードマップでも浸水エリアになっており、1958年の狩野川台風では床上浸水した地域でもあります。河北病院直近の北側に住んでいる住民は、「あの時は、床上まで浸水し、私の胸のあたりまで水が上がってきて生きた心地がしなかった」と当時の恐怖を語っています。
また、11月4日付の東京新聞で、千葉県茂原市がこの30年で3回浸水した中央公民館を避難所として開設した結果、10月25日の豪雨で浸水し、避難した住民を市役所へ再避難させたことが報道されました。この公民館は、過去の浸水時も避難所になっており、市は対応が不適切だったことを認め、今後は洪水や内水氾濫時の避難所として使用しないことを決めたということです。
避難場所は「高いところへ」が原則です。だから、杉一小学校の移転はすべきではありません。そこでお尋ねします。

(1)杉一小が河北病院跡地に移転した場合、避難所が現在よりも低い場所に指定されることになると思いますが、いかがですか?
また、今年5月に川崎登戸で子どもたちの声がうるさいとして子どもたちを殺害する事件が起きました。犯人の動機はまったく許されないし、正当性などまったくありません。この事件からの教訓を活かすとしたら、付近の住民に丁寧な説得や説明をすることだと思います。それが行政の責任ではないでしょうか。そこで、

(2)杉一小が移転することに伴い、移転先の周辺住民にどのような説明をしているのか具体的な答弁を求めます。

【4】災害対策について

台風19号が襲来した時に、杉一小の避難所の手伝いをさせていただきました。115人の住民の方々が避難しており、対応する職員はたったの3人でした。食事や毛布の配布、避難してきた方の状況に応じた部屋割り、風雨が吹き込む扉の隙間をふさぐ土嚢積みなど、職員のみなさんの奮闘には頭が下がる想いでした。そこで伺いますが、

(1)非常勤職員は、災害対応職員としての体制には入っていないと思うが、その点いかがですか?また、今後、非常勤労働者を災害対応の体制に組み込む考えはあるのでしょうか?その場合、その職員が 万一の事故にあった時の補償はどうなるのでしょうか?さらに、来年度以降、会計年度任用職員は、災害対応の体制に組み込まれることになるのでしょうか?

(2)避難所とされている区立学校においては、様々な業務が指定管理者や民間に委託されています。委託契約の中には、災害対応に関する条項は存在するのでしょうか?ある自治体では、避難所である学校にせっかく給食設備がありながら、給食が外部の業者に事業委託されていたことによって、炊き出しができなかった事例も報告されています。事業委託が災害に対応できない事態を生み出すことについて、区の見解を伺って質問を終わります。

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